県外に出稼ぎへ ―「稼げば全部解決する」と思っていた

消費者金融から借りたお金で、ひとまず同窓会費の穴は埋まった。
表面上は、何事もなかったかのように同窓会は終わった。

だが、問題はそこからだった。

毎月の返済日が近づくたび、胸の奥が重くなる。
時給750円の派遣社員にとって、数万円の返済は想像以上にきつかった。

家賃、食費、スマホ代、交通費。
給料は入ってきた瞬間に消えていく。

「このままじゃ、いつまで経っても返せない……」

そう思った僕は、
**“稼げばいい”**という単純な結論に行き着いた。


「県外なら稼げる」その言葉を信じた

当時の職場や友人には、いわゆる“出稼ぎ経験者”が何人かいた。

「県外の工場行けば、寮付きで月30万はいくぞ」
「残業多いけど、短期で金貯めるならアリ」

「先輩は契約満了金で、車買ったらしい」

そんな話で何度も聞いていた。

地元でこのまま時給750円の仕事を続けても、
正直、未来が見えなかった。

だったら、環境を変えて一気に稼いで、
借金を全部返してしまおう。

今思えば、
現実から目を背けた逃げの発想だったと思う。


県外出稼ぎの現実 ――「思ったほど残らない」

派遣会社を通して決まったのは、
県外の工場(自動車メーカー)でのライン作業だった。

寮費無料、光熱費込み。
求人票には「月収25万円以上可」と書かれていた。

「これなら、すぐ返せる」

そう信じて、地元を離れた。
だが、実際に働き始めると話は違った。

・残業はあるが不規則
・夜勤と日勤の切り替え(※一週間ごと)
・食費や日用品は自己負担
・慣れない環境でストレスが溜まる

給料明細を見ると、確かに手取りは増えていた。
しかし溜まったストレスとは裏腹に、思ったほどお金は残らなかった。

孤独と疲労が、判断力を鈍らせる
慣れない土地。
知り合いもいない寮生活。

仕事が終わると、狭い部屋で一人、スマホを眺めるだけ。
気づけば、何のためにここに来たのか分からなくなっていた。

疲れと孤独で、思考が雑になっていく。

「今月さえ乗り切れれば」
「次の給料でまとめて返せばいい」

そうやって、返済を“先延ばし”に考えるようになっていった。


足りない生活費、そして「借りる」という選択

出稼ぎに来れば、生活は楽になると思っていた。
だが実際は、初期費用と日々の出費が想像以上に重かった。

・引っ越しにかかった交通費
・仕事用の服や靴
・食費
・スマホ代
・地元に残した未払いの支払い

給料日前、財布の中はほぼ空っぽだった。

その時、頭をよぎったのが、
「もう一度、借りればいいか」
という考えだった。


「一時的に借りるだけ」――自分への言い訳

すでに消費者金融を使っていた僕は、
“借りること”への抵抗が薄れていた。

「今だけ」
「給料入ったらすぐ返す」
「県外で働いてるんだから問題ない」

そんな言い訳を並べながら、
スマホで再び申し込みをした。

結果は、あっけないほど簡単だった。

「ご融資可能です」

画面に表示されたその文字を見て、
なぜかホッとしたのを覚えている。


借金は、距離を変えてもついてくる

県外に出稼ぎに来ても、
借金の問題は何一つ解決していなかった。

むしろ、
・環境の変化
・孤独
・疲労
が重なり、判断力はどんどん鈍っていった。

「稼いでるから大丈夫」
そう思い込もうとしていただけだった。

この頃から、
借金は“金額”より“考え方”の問題なんだ
ということに、薄々気づき始めていた。


地元には戻らず、別の県で職を変えた決断

数か月後、僕は出稼ぎ先の仕事を辞めた。

体は限界だったし、
「このまま同じ働き方を続けても、何も変わらない」
そう強く感じていたからだ。

ただ、地元に戻るという選択肢は取らなかった。

地元に戻れば、
また同じ低賃金の仕事に戻り、
同じ生活を繰り返すだけだと思ったからだ。

そこで僕は、
別の県で、職業そのものを変える決断をした。

新しい土地。
新しい仕事。
心機一転のつもりだった。

しかし、現実は甘くなかった。

・借金は減っていない
・むしろ生活費で少し増えている
・給料は上がったが、手取りはほとんど残らない

毎月の支払いに追われ、
口座残高を何度も確認する日々。

「何をやっているんだ、俺は……」

環境を変えたはずなのに、
不安と焦りは消えなかった。

それでもこの時点では、
まだ本気で誰かに相談する勇気はなかった。

借金のことを話すのは、
自分の負けを認めるようで怖かったからだ。

この経験で学んだこと

県外に出稼ぎに行けば、人生が立て直せる。
当時の僕は、本気でそう信じていた。

でも現実は違った。

収入が増えても、
借金を生む考え方が変わらなければ、
同じことを繰り返すだけだった。

そして、
「足りなければ借りる」
という選択が、
少しずつ当たり前になっていった。

この先、さらに深みにハマっていくとは、
まだこの時の僕は知らなかった。

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